ブランド構築の背景

「結局、日本の近代って明治・大正の欧化政策によってライフスタイルの急激な変化が始まって、日本的な良い美観や文化を結構捨ててきた。これには夏目漱石や永井荷風などの当時の文学者も結構警鐘を鳴らしていたけど「欧米に追いつき追い越せ!」の勢いは止まることはなかった。本当は文明の進歩と文化は違うものと思うんですけど。現代も結局第二次大戦後アメリカに憧れ、ヨーロッパに憧れと転々として来た感じがする。戦後は特に日本の文化へのアンチ的雰囲気もあって、自分たちを見つめ直すことをせず、ただただ欧米の豊かなライフスタイルを模倣してきたように思う。

これは日本人の好奇心旺盛な無邪気さやこだわりがそういうことを後押ししてきたんだと思うけど。だけど最近の漫画やアニメの世界的席巻は鳥獣戯画に原点を求めることができるし、浮世絵は印象派やアールヌーボーへ多大な影響を与えているし(1960年のユネスコの文化巨匠はピカソと並んで葛飾北斎だし)、竹取物語はかなり昔にSF書いちゃってるし、スターウォーズは武士道と黒澤監督の影響だし、ヌーベルキュイジーヌは日本の懐石料理の影響だし、ヴィトンのモノグラムだってジャポニズムブーム(1867年パリ万博)の時の日本の家紋をヒントにデザインされているし・・・結構日本に根っこがあって誇りに思えるクラシックなものって多いんですよね。ヨーロッパの人々はそういうもの大事にしてますよね。それにいまだに続いているクラシックなものって時代を経ても新鮮ですよね。日本の良さを海外の方のほうがよく知ってたりして、恥ずかしい思いをしたときもあります。

そんなことを思うと、日本独自の感性を今のライフスタイルに反映させることって良いことじゃない?って思うんですよ。そろそろヨーロッパものも十分吸収したでしょうし。日本的感性って繊細でインターナショナルなものと思うんですよね。洋モノのいいものはもちろんいいですよ」